「ごんぎつね」は、「これは、わたしが小さいときに、村の茂平というおじいさんから聞いたお話です。」の一文から始まる。

この部分が意味しているものを探ることで、ごんぎつねの深い読み取りができる。

この一文は必要なのだろうか？

子ども達に、ゆさぶりをかける。

作者が無駄なことを書くはずはないので必要な気がする。

しかし、この一文がなくても物語は成立する。

ここで、子どもの思考にねじれが生じる。（このように分かっていそうで実は分かっていないところを問題にすると子ども達が解決したいと思える課題形成ができる。）

子ども達は放っておいても話し合いを始めた。

ここで次のような発問をした。

ごんを撃ってしまった後に兵十がしたことは何でしょうか？

「えっ？そんなことあるの？」子どもはあっけにとられていた。

「あるよ。冒頭の一文を読むと分かるよ。」と告げると、必至になって読んでいた。

まだよく分からない子どもが多かったので、次のヒントを出した。

「茂平というおじいさんは、だれにごんの話を聞いたの？」

ここでようやく、「あっ。」と子どもから声が出た。

このごんの話を知っているのは兵十だけである。

しかも、ごんは村人にとってはいたずら狐である。

こんなにも人情味あふれる狐だとはだれも予想すらしていない。

よって、ごんの話を兵十が村人に教えたことが分かる。

この結果、ごんの話はずっと村人に語り継がれることになっている。

それは、「中山という所に、小さなおしろがあって、・・・」の部分から分かる。

なぜ兵十は、ごんの話を村人に伝えたのでしょうか？

「ごんへの誤解を解くため。」という意見が多かった。

しかし、それだけだろうか？

これまでの学習で、「ごんと兵十は互いに孤独であり、その寂しさを知っているからこそ、ごんは兵十に償いをし、分かり合いたいと考えた」ことは押さえていた。

「最後の銃から煙がでている時間が長く、そこで兵十がごんを理解し、同時に後悔が生まれている」ことも学んでいる。

そこへ振り返らせると、「兵十は村人に語りつがせることで、ごんの自分を理解してほしいという願いを叶えようとしたのではないか」という話し合いになった。

ここまで読み取りを進めると、冒頭の一文がいかに必要であるかが理解できる。

なんとも美しい文章の作りになっている。

「言葉は通じ合えなければ悲劇を生む半面、永遠に心を繋げることもできる」ということが、この作品のテーマなのではないかと、考えさせられる。