世界へ広がる

〜双方向につながる国際交流の為の役割〜

世界中の先生の授業準備を支援したい

「授業準備の時間を極力短縮することで現場の先生方をご支援したい」という想いのもと、2016年10月に授業準備ネットは誕生しました。 現在では日本全国の先生方が日々多くの実践を投稿されており、若手の先生方を中心にたくさんの方にご利用いただいています。

この度私たちは、世界中の先生方を授業準備という視点でご支援すべく、授業準備ネットのグローバル展開に向けたチャレンジをスタートさせました。 今回は、授業準備ネットと日本教育新聞社が共同で実施した、 文部科学省大臣官房国際課国際戦略企画室長・三輪善英氏(以下、三輪室長)へのインタビューも交えて、 「教育のグローバル化」の観点で授業準備ネットが担っていきたい役割についてご紹介します。

三輪室長インタビュー

写真

まずは、三輪室長にお聞きした「日本型教育の海外展開推進」の現状と今後の展望について、その内容をご覧ください。

Q1, 現在国際課で推進されている、教育における国際交流、国際協力の要点についてお聞かせください。

社会や経済のグローバル化が進み、国際社会や日本を取り巻く環境が大きく変化する中においては、諸外国との交流や協力を一層充実させていくことが重要です。

このため、文部科学省大臣官房国際課では、例えば将来日本の学校のリーダーとなる教員を対象に中国・韓国・タイに派遣し現地教員と交流する事業や、東南アジア教育大臣機構(SEAMEO)において日本から理数教育の専門家を派遣する事業を実施するなど、 諸外国からの期待に応えると同時に日本の教育の国際化に資する取組を推進しています。

Q2, 日本の先生が日々実践されている算数、理科といった理数系教科、図工、体育、音楽な情操教育、そして特活、 日直などの日本型教育コンテンツが世界へ発信されることについて、日本の先生にとってのメリット、 及び教育のグローバル化という観点から一言お願いいたします。

近年、日本の教育制度に対する諸外国からの関心が高まっており、日本型教育を導入したいという声が寄せられています。 日本型教育が海外へ展開される過程では、日本の教員が現地教員と交流したり、現地における指導方法などを学ぶ機会などがあります。

こうした取組は、参加する日本の先生一人ひとりが、自身の指導方法などを見つめ直すきっかけになると同時に、 これまで国内で行ってきた教員研修や国際交流の更なる充実にもつながっています

Q3, 一つの取り組みとしてJICAでは、開発途上国の教員に対して日本の教員の指導法、 また掃除や給食当番といった日本の学校の日常を示した動画等を展開しています。 開発途上国に対する教育協力という観点で、こういった取り組みに対するご意見をお聞かせください。

開発途上国に対する日本型教育の展開は、持続可能な開発目標(SDGs)に貢献する重要な取組の一つです。 その上で、インターネットなどを活用した動画による発信は、世界中の人々が時間や場所を問わずに日本型教育に触れることができる機会として有意義であり、今後の更なる活用が期待されます。

なお、文部科学省が推進している「日本型教育の海外展開推進事業(EDU-Portニッポン)」のホームページでも、 日本の小学校の一日の様子をわかりやすく紹介した動画を複数言語で掲載しています。
(https://www.eduport.mext.go.jp/en/index.html)

教育における国際交流、国際協力の重要性

平成29年度版と前回の平成20年度版学習指導要領に共通して使われているフレーズに「グローバル化」があります。 現代を生きる上で、グローバル化の重要性は一層増しており、もちろん教育においても、その動きは活発になっています。 教育における国際交流、国際協力の重要性と現状の方針については三輪室長のインタビューにあった通りです。

まさに、授業準備ネットが2019年に実施した「独立行政法人国際協力機構(以下、JICA)×授業準備ネット」の取り組みも、 「諸外国からの期待」に応え「日本の教育の国際化」に貢献するための、活動です。

日本とセネガルの教員による授業交流

2019年1月、JICAがセネガルにて実施中の「初等教育算数能力向上プロジェクト」に授業準備ネットを活かせるのでは、と考えたことが協働のきっかけです。 同プロジェクトでは、セネガルの先生方の指導力改善を通じて、児童の初等算数の学びを向上させる為、 日本の指導法をベースとした研修動画作成やSNSでの配信等、ICTを使った取組みを行っています。

JICAセネガル事務所の職員、 専門家の皆様の熱意によって、既に多くのセネガルの先生方へその研修動画が届けられており、日本型教育がセネガルで受け入れられる土壌ができていました。 その後JICAとの協議を経て、授業準備ネットを通じて日本の先生方の指導法を試行的にセネガルの先生へ届けることとなったのです。 JICA、授業準備ネット、双方にとって、チャレンジングな新しい試みとなりました。

「JICA×授業準備ネット」の具体的な活動内容

写真

まず、JICAセネガル事務所よりいただいたセネガルの先生方のニーズに応じ、現地での指導が難しいとされる単元を特定。 その後授業準備ネットにご投稿いただいている先生方にお声がけし、セネガルの教室の設備事情やセネガル人の特性なども踏まえた指導動画を撮影いただいた後、仏語翻訳を施して授業準備ネットにて公開しました。

それらの動画は即時にセネガルの先生方からもアクセスされ、多くの閲覧数を記録しました。中には動画の内容をセネガルの文脈に合わせてアレンジし、 自ら配信する先生も現れました。授業を通じて日本とセネガルの先生が繋がる事例が生まれたのです。 また、授業だけではなく互いの学校の様子を記録した動画の交換もなされ、掃除や給食など日本ならではの学校文化もセネガルへ届けられました。

双方向で深まる教材共有

この活動は、日本の先生方にも、新たな学びの機会として捉えていただいています。日本の先生方は総じて高いモチベーションと興味をもって臨んでくださっており、 ある先生は「自分の実践が受け入れられて嬉しい」と、またある先生は「自分の指導法がセネガルの先生を通じて現地の授業に取り入れられた時の、 子ども達の様子を見てみたい」とおっしゃっています。日本の先生方が新たな可能性を感じてくださっているのであれば、 これ以上嬉しいことはありません。

三輪室長も触れられている通り、単に日本型教育を海外に展開していくだけではなく、 日本の先生方にとってもスキルアップの機会となること、つまり「双方向でつながる」ことが、教育における国際交流において非常に重要な点といえます。

写真

授業準備ネットが抱くビジョン

私たち授業準備ネットは今後も日本国内の先生方のご支援をさらに強固にしていくと同時に、 「国を越えて教員が子ども達のために協働するプラットフォーム」として、 日本と世界の先生方が双方向でつながる国際交流の場となるべく様々な「挑戦」を進めてまいります。 これからもますます多くの先生方のご参加を心よりお待ちしております。

共有された授業動画のイメージ

写真 写真
写真 写真
写真

※本記事の内容は、下記の媒体でも記載されております。
◆文部科学省「EDU-Portニッポン ニーズ / シーズ」
(https://www.eduport.mext.go.jp/column/2019/08/web.html)
◆日本教育新聞「世界へ広がる日本の教育~双方向でつながる国際交流へ~」
(https://www.kyoiku-press.com/post-207963/)